中村菜花群の「なたね歌」八景

菜種群れ咲く　公園居
身は蝶と化し　風乗りぬ
夢や　大空　広い蒼
悦に舞へるよ　気持ち和す

　　なたねむれさく　こうゑんゐ
　　みはてふとけし　かせのりぬ
　　ゆめやおほそら　ひろいあを
　　えつにまへるよ　きもちわす

　　　　　　　田居に出で我　菜を摘みぬ
　　　　　　　幼稚園　行く前の頃
　　　　　　　大空めざす　揚げ雲雀
　　　　　　　良き音ふと知る　風も止む

　　　　　　　　　　　たゐにいてわれ　なをつみぬ
　　　　　　　　　　　えうちゑんゆく　まへのころ
　　　　　　　　　　　おほそらめさす　あけひはり
　　　　　　　　　　　よきねふとしる　かせもやむ

群れ咲く菜種　地を覆ひ
山辺黄色に　埋めゐぬ
娘らの笑み映え　安堵して
風もそよげり　冬忘る

　　むれさくなたね　ちをおほひ
　　やまへきいろに　うつめゐぬ
　　こらのゑみはえ　あんとして
　　かせもそよけり　ふゆわする

　　　　　　　紋白蝶　良う舞ひ居
　　　　　　　菜種の咲く　畦道往ぬ
　　　　　　　キヤラメル好けり　我笑むを
　　　　　　　箱にと数へ　悦覚ゆ

　　　　　　　　　　　もんしろてふ　ようまひゐ
　　　　　　　　　　　なたねのさく　あせみちいぬ
　　　　　　　　　　　きやらめるすけり　われゑむを
　　　　　　　　　　　はこにとかそへ　えつおほゆ

群れ咲く菜種　愛で遊び
夕映に居ん　風弱げ
知らぬお宮を　通るうち
森の梢へ　円い月

　　むれさくなたね　めてあそひ
　　ゆふはえにゐん　かせよわけ
　　しらぬおみやを　とほるうち
　　もりのこすゑへ　まろいつき

　　　　　　　我よく夢を　覚えけり
　　　　　　　菜種咲きし野　畦道に
　　　　　　　沿うて往ぬ　居家　土間　竈
　　　　　　　五右衛門風呂ら　春霞む

　　　　　　　　　　　われよくゆめを　おほえけり
　　　　　　　　　　　なたねさきしの　あせみちに
　　　　　　　　　　　そうていぬゐや　とまへつひ
　　　　　　　　　　　こゑもんふろら　はるかすむ

我が筆名に　用ゐける
菜種よろしや　群れ咲きぬ
空薄青く　胡蝶舞へり
見映えせん野　絵と覚ゆ

　　わかひつめいに　もちゐける
　　なたねよろしや　むれさきぬ
　　そらうすあをく　こてふまへり
　　みはえせんの　ゑとおほゆ

　　　　　　　幸せさうに　黄色満ち
　　　　　　　菜種群れゐぬ　蝶舞へり
　　　　　　　霞める空や　日も温和
　　　　　　　絵のごとく好げ　悦覚ゆ

　　　　　　　　　　　しあはせさうに　きいろみち
　　　　　　　　　　　なたねむれゐぬ　てふまへり
　　　　　　　　　　　かすめるそらや　ひもをんわ
　　　　　　　　　　　ゑのことくよけ　えつおほゆ

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