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出来立て!今日の一首

〜令和元年九月分 の 新いろは歌 中村菜花群〜

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令和元年9月30日(月)

        秋 祭 気 分


 鹹い塩と 黒胡麻を

 今日赤飯の 御結びやな

 常に味良う 我笑み得

 目出度さも添へ 緩り居ぬ


       からいしほと くろこまを
       けふせきはんの おむすひやな
       つねにあちよう われゑみえ
       めてたさもそへ ゆるりゐぬ


 ローソンで買った赤飯のおにぎりを、お昼に食べました。
「おこわ米八監修 赤飯おこわ」(125円 税抜) です! 国産米使用∞昔ながらの製法で生きる 豆の香りと風味≠ニの謳い文句で、食べ応え満点でした。ご飯が立っているというのでしょうか、しっかり米の粒々感がありながら、噛めばもっちりとして軟らかく、とても美味しかったです。豊作を祝う秋祭の気分に、しばし浸りました。
 ところで、私は熟語の音読み・訓読みを説明する時に、いつも「赤飯」「焼飯」「牛丼」「鰻重」の語を使います。音・訓の組合せ四種の例に用いるわけです。
「セキハン」が「音+音」、「やきめし」が「訓+訓」ですね。
「ギュウどん」は「音+訓」になって、これがいわゆる重箱読み≠ナす。
「うなジュウ」は「訓+音」になって、これがいわゆる湯桶読み≠ナす。
 漢字を眺めているだけで、なんだか嬉しくなってしまいます。
 食事の話題というのは、いつも楽しいですからね!



令和元年9月29日(日)

        淡 味 注 文


 軽く煮えゐる 野菜盛り

 少とお葱載せ スウプ湯気

 塩拉麺を 食べむよな

 恋ひては待つぞ 我笑みぬ


       かろくにえゐる やさいもり
       ちとおねきのせ すうふゆけ
       しほらあめんを たへむよな
       こひてはまつそ われゑみぬ


 七月十七日の項でも述べた「白馬童子」伊丹店へ、昨日久しぶりに行って来ました。
 いつもなら迷わずこってり味のしあわせラーメン≠頼むのですが、今回は「塩ラーメン」(700円 税抜) をいただきました。このところあっさり味≠ノ目覚めた私です。
 やはりこってり≠フ品目とはスープが全然違いますね! 正直言って、最初はちょっと頼りないなぁと感じました。特徴の無い、至極普通の塩ラーメンだなぁと。でも、美味しかった! 若布や野菜がいっぱい入っていて、体にも優しい味わいですね。また時々食べたいと思っています。
 私にとって、ラーメンは薄味が盲点ですね。どうしても個性の強い濃い味に注意が行ってしまい、これまではほとんど注文しませんでした。しかし、毎日でも食べられる味というのは、やはりシンプルなものが一番でしょう。あまりしつこいのは嫌われます。
 君子の交わりは淡きこと水の如し――、ですか。今日はそんなことを考えさせられました。
 えっ? 能書きは要らないって? 食えばわかる?
 そういえば、何かのCМで言ってましたね。「うまいもんはうまい」と!



令和元年9月28日(土)

        対 岸 之 赤


 水路を隔て 岸生ふる

 その彼岸花 好げ咲み得

 鮮やぐと燃ゆ 胸迫り

 悦に誉め 我こちら居ぬ


       すいろをへたて きしおふる
       そのひかんはな よけゑみう
       あさやくともゆ むねせまり
       えつにほめわれ こちらゐぬ


 やはり自転車は好いですね! 朝の空気に触れながら普段より少し遠い場所へ行くだけで、とても新鮮な気持ちになります。
 西宮市の堤町から上之町辺り、武庫川堤防下の水路脇を走っていたら、流れの向かい側にちらりと赤いものが見えました。
 彼岸花です!
 水路のコンクリート塀と土手の石垣との間、それこそ猫の額ほどの狭い場所に、彼岸花がほんの四、五本伸びているのです。普通なら見向きもしないはずですが、花の鮮やかな赤さゆえ、その存在を世間に知らしめているのです。
 あぁ、花も懸命に生きているんだなぁと、妙に感動してしまいました。
 加えて、花の咲いている場所が、こちら側の岸ではなくて、向うの岸。彼(か)の岸の花――。単なる洒落ではありません、これこそが彼岸花≠セと感じ入ったのです!
 さらに「お彼岸」とは、此岸(=この世)にいながら彼岸(=あの世)を想い、そして自らを省みる、そのための良い機会なのだと思いました。いずれは誰しもが必ず行かなければならない彼岸です。それこそ「対岸の火事」では済まないのです。長いようで短い人生、一日々々を大切にし、常に悔いの無いよう生きなければ……。
 たった数本の花から、そんなことまで考えさせられました。彼岸過ぎ、彼岸に咲いた彼岸花のお蔭です。



令和元年9月27日(金)

        遊 歩 彩 涼


 そこ風渡り 蝶も舞ひ

 悦に翅など 揺る様子

 オレンジ色の 秋桜

 咲むを好げ誉め 道辺居ぬ


       そこかせわたり てふもまひ
       えつにはねなと ゆるやうす
       おれんしいろの あきさくら
       ゑむをよけほめ みちへゐぬ


 創作意欲は旺盛なのに、詠みたい題材が見つからない……。そんな時、尼崎市立立花西小学校のフェンス脇で、通りすがりにこの「オレンジ色の 秋桜」に出逢いました。
 今日はこれだ! そう感じました。花びらの鮮やかさが、目に、そして胸に沁みました。
 小学館『日本大百科全書』によると、これは「キバナコスモス」というそうですね。
《春播き一年草で、コスモスに比べ草丈は短く、葉幅は広く、色は黄、橙(だいだい)、赤などで、半八重咲きである。草丈50センチメートルほどの極矮性(ごくわいせい)種もある。近年とくに日本で品種改良が進み、秋にこぼれ種で発芽、開花する年2回咲きの品種もつくられている。》
 とのことでした。
 そういえば、花びらがややふっくらして、隣の花びらと少し重なり気味です。これを半八重咲き≠ニ呼ぶのかと、妙に感心した次第です。
 なお、蛇足になりますが、この時「蝶」は飛んでいませんでした。「ね」の字の用途に困り、「はね」という語を思い付いたので、それなら蝶でも飛ばせてやれと……(笑)。花に蝶々は付き物ですし、それに、蝶よ花よと育った私ですからね(大笑)。



令和元年9月26日(木)

        日 向 清 涼


 お地蔵笑みぬ 祠前

 白彼岸花 好げや揺れ

 茎すつと伸ぶ 威勢あり

 胸にも和を得 愛でたるぞ


       おちさうゑみぬ ほこらまへ
       しろひかんはな よけやゆれ
       くきすつとのふ ゐせいあり
       むねにもわをえ めてたるそ


 伊丹市野間にある「延命地蔵尊」の前に、今年も白い彼岸花がずらりと咲き揃いました。
 このお地蔵様は駐車場脇の小さな祠に祭られていて、通りすがりに眺めるだけだったので、今までさほど気にも留めていなかったのです。今日、満開の白彼岸花(いわゆる白花曼殊沙華=jに魅かれてお参りしたところ、由来を記した次のような額が掛かっていたのです。

      由 緒

   いなのなる
   のまらいふくちたづやまふ
   つきぬよろこび
     とくぞえんめい

   ご本尊は 当家に祭り
   伝わりましたご霊験あら
   たかな 延命地蔵尊 で
   あります 有難いご利益[  ]
   なるべく多くのお方にお[  ]
   ていただきますよう念願して
   ここにお祭り申し上げました

    昭和五十九年八月

          辰巳宗順[  ]

 額といっても木板に墨書してあるだけなので、長い年月のうちにほとんど字が消えてしまって、読むのに大変苦労しました。何とか判読しましたが、私の読み取りに誤りがあるかもしれません(どうしても読めない部分は[ ]で示しました)。
 御詠歌を漢字に直せば「猪名野なる野間来福地田鶴や舞ふ 尽きぬ喜び説くぞ延命」ということになるのでしょう。
「来福地」の地名と、千年の長寿を表す「田鶴」、そして「延命」の地蔵が詠み込まれ、実に福々しい歌ですね。
 その祠へと続く白い花は白日≠想わせ、光あふれる極楽浄土をあたかも眼前に見るかのようでした。
 いつまでも元気で長生きし、現世を精一杯生き抜き、やがては安楽な最期を迎える――。
 それこそが「尽きぬ喜び」といえるのではないでしょうか。



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