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出来立て!今日の一首

〜平成三十年十月分 の 新いろは歌 中村菜花群〜

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平成30年10月31日(水)

        晩 秋 漏 斗


 開きゐて揺れ 紅燃えむ

 朝顔やな 驚けり

 今こそ地面 根伸ばせる

 十月末を 歌詠みぬ


       ひらきゐてゆれ へにもえむ
       あさかほやな おとろけり
       いまこそちめん ねのはせる
       しふくわつすゑを うたよみぬ


 通勤途中、踏切が開くのを待つ間、水路脇に朝顔が咲いているのを見かけました。もう十月も終わりだというのに、枯れずに花を付けているのです!



平成30年10月30日(火)

        幾 何 模 様


 夢楽しげ 輪を描く

 デザイン定規 遊ぶとす

 胸に迫れる 美覚えつ

 花らも見ゐぬ 喜べり


       ゆめたのしけ わをゑかく
       てさいんちやうき あそふとす
       むねにせまれる ひおほえつ
       はならもみゐぬ よろこへり


 レストランのお子様セットのおまけで貰った「デザイン定規」の歌です。



平成30年10月29日(月)

        元 気 飛 遊


 風渡る町 薬屋居

 オレンジ色の 象を見に

 父母と手つなぎ 胸は燃え

 声上げ空へ 夢呼びぬ


       かせわたるまち すくりやゐ
       おれんしいろの さうをみに
       ふほとてつなき むねはもえ
       こゑあけそらへ ゆめよひぬ


 薬局の前に設置されている乗り物「サトちゃんムーバー」を題材に一首詠みました。



平成30年10月28日(日)

        天 界 飛 遊


 背へ羽も得つ 我夢で

 自由に舞ひぬ 青き鳥

 高く歓ぶ 大空の

 幸無限やな 見据ゑゐる


       せへはねもえつ われゆめて
       しいうにまひぬ あをきとり
       たかくよろこふ おほそらの
       さちむけんやな みすゑゐる


 鳥のように自由に空を飛べたら……!



平成30年10月27日(土)

        飯 上 烈 風


 我を招ける お店へ居

 選りし 黒豚カツ丼ぞ

 更にこの酔ひ 夢模様

 良い味で食む 猶好きぬ


       われをまねける おみせへゐ
       えりしくろふた かつとんそ
       さらにこのゑひ ゆめもやう
       よいあちてはむ なほすきぬ


「遊食豚彩 いちにいさん」阪急西宮ガーデンズ店で黒豚バラかつ丼を食べました。



平成30年10月26日(金)

        竹 取 浪 漫


 大いなる空 月見頃

 竹より生まれ かぐや姫

 胸も温和で 幸褪せず

 絵と映えし夕 野辺に居ぬ


       おほいなるそら つきみころ
       たけよりうまれ かくやひめ
       むねもをんわて さちあせす
       ゑとはえしゆふ のへにゐぬ


 執筆中

  

  



平成30年10月25日(金)

        堅 辛 御 菜


 細い根盛りぬ お味を見

 金平牛蒡 前に笑む

 よろしや冴えて 鷹の爪

 紅和せる 夕餉とす


       ほそいねもりぬ おあちをみ
       きんひらこはう まへにゑむ
       よろしやさえて たかのつめ
       くれなゐわせる ゆふけとす


 帰宅した私に、妻が、
「今日はチンピラ≠作ったからね」
 と言うのです。妻なりのジョークだったようですが、つまらなさすぎて、逆に笑ってしまいました。チンピラ≠チて下っ端のヤクザだろう、そんなもの作ってどうするんだ、と私は真面目に切り返しました。そのチンピラ≠ネらぬきんぴら≠ヘ、辛口醤油に鷹の爪がピリッと利いて、とても美味しくいただきました。
 さて、【金平牛蒡(きんぴらごぼう)】の由来については、小学館『日本大百科全書』に、
《名は、この料理が堅くて辛いことから、金平節の主人公坂田金平の強さに見立ててつけられたという。》
 また、「坂田金平」という人物については【金平節】の項に、
《岡清兵衛(おかせいべえ)が創作した架空の人物、坂田金平を主人公とするため、この名でよばれている。坂田金平は源頼光(よりみつ)の四天王の一人、坂田公時(きんとき)の一子と設定されており、超人的な力をもって暴れ回り、邪悪を懲らしめる。》
 と解説されています。さらに、清水桂一 著『たべもの語源辞典』(東京堂出版) によると、
《意地悪く荒々しい婆を金平婆(きんぴらばば)というが、金平(きんひら)とは強きもののたとえにいう。》
《江戸時代に元気な娘のことを「きんひら」といった。また、「金平糖(こんぺいとう)」というのも実はきんひら糖といったものである。娘の気の強いとか、金平糖の砂糖の甘味が強いといったように、「強い」ことを金平(きんひら)と称した。金平牛蒡も「強い」といった感じのする料理である。強精作用があると考えられたところから名づけられたのである。》
 との説も併せて紹介されていて、面白いなと思いました。



平成30年10月24日(水)

        秋 乃 色 艶


 滑子が茶色 葱緑

 和蕎麦に多く 載せられむ

 笑んで食べゐ 汁吸ひぬ

 美味さあるを得 今日も好し


       なめこかちやいろ ねきみとり
       わそはにおほく のせられむ
       ゑんてたへゐ つゆすひぬ
       うまさあるをえ けふもよし


 妻が買い物に出掛けている間、昨日は子供と二人で散歩に出ました。時々雨粒がぽつりと肌に当たりましたが、結局降らずに済みました。近所の公園へ行き、吊り橋型遊具、ブランコ、滑り台など、一巡した後、球形ジャングルジムに落ち着きます。子供が先に中へ入り、私が入口でチャイムを押す真似をするのです。
「ピンポ〜〜〜ン!」
「はい、どなたですかぁ?」
「パパで〜〜〜す!」
「どうぞ、お入りください!」
 私も中へ入って座ります。すると……。
「はい、どこへ行きますか? イオンですか? イズミヤですね! はい、わかりました」
 自宅を想定しているのかと思ったら、いつの間にかそこが車内になっていて、仕草から察するに、どうやらバスの車掌の真似をしているらしいのです。お客に代わって次、降ります≠フボタンを押してくれたようです。
「ガタンゴト〜ン、ガタンゴト〜ン、ガタンゴト〜〜〜ン!」
 えっ? この音は、バスじゃなくて電車?
「はい、何にしますか? アイスクリームですね、お待ち下さ〜い!」
 えっ? 電車じゃなくて、喫茶店? レストラン? いや、やっぱり車内販売?
 子供の遊びって、ほんとに自由な発想で、面白いですね!
 帰宅したら、妻が夕食になめこ蕎麦≠作ってくれました。
 今日も我が家は平和だなぁ……。しみじみと、そう思いました。



平成30年10月23日(火)

        生 物 讃 歌


 紅を添へ 薔薇咲んで

 椿象緑 艶ある背

 根差す命に 今日もまた

 歓び覚え 勇湧きぬ


       くれなゐをそへ はらゑんて
       かめむしみとり つやあるせ
       ねさすいのちに けふもまた
       よろこひおほえ ゆうわきぬ


 先週末に見た、カメムシの歌です。



平成30年10月22日(月)

        秋 桜 夢 語


 お花の精も 空で舞ふ

 日温う居たり 秋頃よ

 ベンチ座れる 乙女見ゆ

 寝顔優しげ 悦に笑む


       おはなのせいも そらてまふ
       ひぬくうゐたり あきころよ
       へんちすわれる をとめみゆ
       ねかほやさしけ えつにゑむ


 暑いくらいの好天気だった昨日、武庫川コスモス園へ行って来ました。



平成30年10月21日(日)

        深 辛 覚 醒


 燃ゆる王座の 拉麺は

 紅色ぞ 乙で笑む

 少と食べ刺激 風呼ぶや

 真似得ぬ美味を 誇りにす


       もゆるわうさの らあめんは
       くれなゐいろそ おつてゑむ
       ちとたへしけき かせよふや
       まねえぬひみを ほこりにす


 大阪王将つかしん店で「炎のラーメン」を食べました!



平成30年10月20日(土)

        生 薬 成 分


 威勢あらんや 笊蕎麦の

 夕餉を日頃 食べ美味し

 常に程良う 血も巡り

 お腹空き得て 我笑みぬ


       ゐせいあらんや さるそはの
       ゆふけをひころ たへむまし
       つねにほとよう ちもめくり
       おなかすきえて われゑみぬ


「北斎は無類の蕎麦好きで、蕎麦の絵も多い。
 蕎麦好きは長命というけれど、九十まで生きた北斎を見ると、そうだなぁ……と思う」

 確か「家族亭」だったと思いますが、もうずいぶん前にそんなCМがあったのを、ふと思い出しました。
 蕎麦が体に良いというのは、昔から言われていることですね。先日の『この差って何ですか?』でも、蕎麦に含まれるルチンという成分が高血圧や動脈硬化を予防し、LPSという成分が免疫力をアップさせる、との説明がありました。
 それならば……というわけで、これからもせっせと蕎麦を食べよう、そう決意した次第です。
 私はもともと蕎麦が大好きですからねぇ、実際、毎日でも食べられますよ! 妻にその旨を話すと、じゃあどんどん食べたらいいと言って、三日連続で夕食に蕎麦を茹でてくれました。蕎麦はすぐにお腹が減りますからねぇ、翌朝の寝覚め爽やか、気分も胃腸もすっきりします。こりゃあ、マジで毎晩蕎麦かな? 好物で病気が予防できるなら、まさに一石二鳥ですよ! 蕎麦湯も飲んで、大満足です。
 何事も、無理せずに続けられるというのが一番ですね! 物が蕎麦だけに、やはり細く長く″sかないとね!(笑)



平成30年10月19日(金)

        荒 地 之 林


 泡立草や 其処に揺れ

 多く根が張り 並ぶべし

 天を求めつ 背伸びする

 黄色見えゐぬ 好げ咲まむ


       あわたちさうや そこにゆれ
       おほくねかはり ならふへし
       てんをもとめつ せのひする
       きいろみえゐぬ よけゑまむ


 十月十六日放送のTBS系『この差って何ですか?』をたまたま見たら、「出前」と「宅配」の意味の違いを説明していて面白いなと思いました。「出前」とは、お店で食べるべき料理を別の場所へ届けるサービスのことで、「宅配」とは、お店では料理を食べない配達専門店のことだったんですね! 納得しました。
 番組中、ふつう「そばは出前」「ピザは宅配」だが、お寿司に関しては「出前寿司」「宅配寿司」の両方ある、という話も出て、私は近所にある宅配専門の寿司店を想い出していました。そのお店の裏口付近に、いつも秋になると背高泡立草が何本も伸び、風に揺れる花穂がフェンス越しに顔を覗かせます。空地の似合う花。駐車場の片隅や、工場脇、河川敷、線路沿い、コンクリートの隙間に根を下ろし、狭い場所にも群生し、図太く育つ生命力、野生のしたたかさ、威勢の良さ、そして、溢れるほどに咲く強烈に鮮やかな黄色! しかしどこか哀愁を帯び、頽廃の影を漂わせる植物……。
 前栽に生えれば目の敵にされ、雑草として駆除されてしまうけれど……。私はこの背高泡立草の花が、わりと好きなのです。秋風に吹かれてサイクリングに出かけると、よくこの花をケータイで撮っています。地元尼崎市から、伊丹市、川西市、宝塚市など。上の画像は遠乗りの際に撮影した、大阪府大東市深野北にある深北緑地です。黄金色の雲が広がって、全く見事な群生ですね!
 今年はまだ見に行っていませんが……。ちょうど今の時季、あちこちで根強く咲いていることでしょう。

  
伊丹市口酒井               伊丹市北本町

  
伊丹市野間                尼崎市水堂町

  
尼崎市南武庫之荘              宝塚市安倉



平成30年10月18日(木)

        大 坂 街 道


 京 伏見 淀 枚方

 守口参る 天青に

 野へ転げ寝 咲む花愛づ

 清楚さ覚ゆ 忘れ得ぬ


       きやうふしみ よとひらかた
       もりくちまゐる てんあをに
       のへころけね ゑむはなめつ
       せいそさおほゆ わすれえぬ


 東海道五十三次のその先に、さらに四つの宿場を加えた五十七次≠フ歌です。
「ふしみ」「よど」「ひらかた」「もりぐち」に仮名の重複が無いことに気づき、一首にまとめてみました。『広辞苑(第六版)』ではこの四宿を通る街道を「京街道(大坂街道)」として、別に項を立てていますが、小学館『日本大百科全書』を見ると、
《江戸(日本橋)―京都(三条大橋)間に品川―大津宿の53宿が整い、通常「五十三次」という。(略)なお大津より分かれて、伏見(ふしみ)、淀(よど)など四宿を経て大坂に至る街道も東海道とした。》
 とあり、大津よりの延長が東海道≠ノ含まれていたことが明記されています。さらに、志田威 著『「東海道五十七次」の魅力と見所』(交通新聞社 刊) には、
《事実、京都市伏見の説明には「この付近は宿場町の中でも本陣、旅籠などが集中するところで……、東海道54番目の宿として大いに賑わった」と記載されていますし、また大阪府守口市の東海道には「……幕府の公称した東海道は、江戸から大坂まで57次とされています。57番目の宿場として守口宿が整備されたのは元和2年(1616)の『証文の写し』や……」(守口市教育委員会) との解説碑が建てられ、東海道は守口宿までの57宿駅であった旨を記しています。》
 という、詳しい説明がありました。
 私は伏見、淀、枚方、守口をサイクリングで何度か訪れたことがありますが、これまではさほど東海道≠意識していなかったので、まずは守口市教育委員会の解説碑というのを、今猛烈にこの目で見たい°C持ちになりました。



平成30年10月17日(水)

        垣 根 黄 昏


 我知らぬ町 公園に

 朝顔 威勢衰へて

 見よ種も生り 葉や蔓の

 毛を染め夕日 すぐ消えむ


       われしらぬまち こうゑんに
       あさかほゐせい おとろへて
       みよたねもなり はやつるの
       けをそめゆふひ すくきえむ


 十月も半ばを過ぎましたからねぇ。道路脇のフェンスに蔓を巻き付け、一週間前までは確かに青い花を咲かせていた朝顔でしたが、ついに花の時季を過ぎたようです。葉は黄ばみ始め、たくさん実が生り、種を被う苞(ほう)の産毛に日が当たって、優しい光に包まれているのをしみじみと眺めました。それを題材に一首詠んでみました。
 ただ、この歌には虚構があります。朝顔を見たのは本当ですが、それは見知らぬ町の公園でもなく、夕方でもありません。余った仮名の処理に困って「我知らぬ町 公園」「夕日 すぐ消えむ」の語句をひねり出したのです。その点が少し引っかかりました。
 しかし、それはそれで良いのかもしれません。私は日頃の出来事を記録する意味で、事実に基づいた歌作りを心掛けていますが、新いろは歌を作り始めたばかりの頃は空想≠フ作品が多かったなぁと、改めてそう思います。例えば、以下の歌をご覧下さい。

   わたつ海より 風吹けば   わたつうみより かせふけは
   梢 千枝揺れ 井戸温む   こすゑちえゆれ ゐとぬるむ
   空も朧で 雨の日に     そらもおほろて あめのひに
   優しき女 招く家      やさしきをんな まねくいへ

 これは二十二年も前の、平成八年十二月三日に詠んだものです。当時はとにかく仮名を埋めるのに精一杯で、推敲の余裕などありませんでした。用途の少ない仮名を先に使い切るべく、「わ」は「わたつうみ(わたつ海)」、「せ」は「かぜ(風)」、「ゑ」は「こずゑ(梢)」、「え」は「ちえ(千枝)」、「ゐ」は「ゐど(井戸)」、「ぬ」は「ぬるむ(温む)」、「お」「ほ」「ろ」は「おぼろ(朧)」、「ね」は「まねく(招く)」にしようと、単純に言葉を拾って行ったにすぎません。にもかかわらず完成作は潤いがあって抒情的で、我ながら上出来だなぁと実感しました。「優しき女」の登場も、「雨の日」になったのも、全く予想外の展開でした。完全に空想の産物≠セったのです。今にして思うと、なんと自由な作品でしょう! 創作に慣れてしまった現在、逆に、こういう歌は作れないなぁと感じます。事実ばかりに囚われて想像力≠フ羽ばたく余地を無くしてしまったのかもしれません……。
 初心に帰らねば! 新鮮味≠思い出さねば! 今回は、そんな反省が生まれました。



平成30年10月16日(火)

        御 祭 気 分


 琥珀色せん 麦の酒

 泡も滑らか 満ち足りて

 嬉しと覚ゆ 酔へるぞや

 常に笑まふを 恵比寿居ぬ


       こはくいろせん むきのさけ
       あわもなめらか みちたりて
       うれしとおほゆ よへるそや
       つねにゑまふを えひすゐぬ


 先の串揚酒場・かわ神で飲んだ生ビール「琥珀ヱビス」が非常に美味しかったので、それを題材に一首詠んでみました(上の画像は串カツ屋さんとは無関係ですので、念のため)。琥珀の色合い、きめ細やかで滑らかな泡、程好い苦みのある深い味わいで、乾いた砂に水が浸みるように、すうっと身体に入ってゆきます。駆け付け三杯≠カゃないけれど、軽く三杯飲み干しました(笑)。
 串カツがさらにビールの味を引き立てます。いや、逆かな? ビールが料理の味を引き立てるのか。いやいや、その両方ですね! とにかく最高に幸せな気分でした!! 頼んだメニューは、子持ちししゃも、鶏つくね、天使の海老、牛たん、鴨ねぎ、アスパラベーコン、仙鳳趾の特大カキ、しいたけ肉づめ、淡路のたまねぎ、カレー蓮根、馬刺しユッケ……。唐辛子の利いた「かわ神デス。」というオリジナル串カツや、ビーフシチューという名の串カツもいただきました。是非また行きたいです!!
 さて、ビールのほうへ話を戻しましょう。東京都渋谷区の恵比寿という地名は、この「ヱビスビール」から採ったものだというから驚くじゃありませんか!(これは有名な話のようですが、私は全く知りませんでした。) 東京書籍『雑学大全』(東京雑学研究会 編) によると、
《特定の商品が、駅名や地名になることは大変珍しい。……》
 として、明治二十三年に発売された「恵比寿ビール(のちヱビスビールと改名)」がすぐさま人気を博し、商品の需要が増えたこと、明治三十四年にはビール出荷のための貨物駅が「恵比寿停車場(現在のJR山手線「恵比寿駅」)と名づけられたこと、そして昭和三年にビール工場付近一帯の地名が「恵比寿」となったことなどが述べられています。
 ちなみに、それ以前の正式な地名は「東京府荏原(えばら)郡目黒村三田」だったそうです。



平成30年10月15日(月)

        肉 膾 小 鉢


 馬刺し紅 卵黄や

 葱も混ぜむぞ とろり食べ

 滑るこの美味 ユツケにて

 好いお味増え 笑顔をす


       はさしくれなゐ らんわうや
       ねきもませむそ とろりたへ
       ぬめるこのひみ ゆつけにて
       よいおあちふえ ゑかほをす


 阪急武庫之荘駅南口から程近い「串揚酒場 かわ神」へ、昨夕、親子三人で行って来ました。八月に初めて訪れて以来、久しぶりにここの串カツでクーッと一杯、最高です!
 今回は「馬刺しユッケ」のメニューが印象に残ったので、一首詠んでみました。
 味に関して正直な感想を言うと、タレはもう少し甘さを抑えたほうが良いかな、と思いました。刺身醤油的な味のほうが、私は好きです。まぁ、好みは人それぞれですからね。馬肉そのものは、とても美味しく軟らかくいただきました。
 さて、私が詠んだ歌の話です。創作過程でどうしようかと迷った点が二つあります。
 まずは「まじる(まぜる)」の漢字表記「交じる」「混じる」の使い分けの問題です。
 ふつう「交じる」は「子供の中に大人が交じる」のようにあとで再び分けることができる¥鼾に、「混じる」は「絵の具の赤と青が混じる」のように溶け合ってしまって、あとで分けることができない¥鼾に用います。ならば、肉に葱をまぜる場合は「交ぜる」を使うべきではないかと、一瞬そう思ったのです。しかし、料理は味や香りが混然一体≠ニなるからこそ風味が出るのだろう、やはり「混ぜる」が相応しいと、そう思い直しました。
 もう一つは、推敲の問題です。
 最初に詠み上げた段階では、第三句目以降が以下のようになっていたのです。

  滑るこの美味 好いお味   ぬめるこのひみ よいおあち
  今日愉悦にて 笑顔をす   けふゆえつにて ゑかほをす

「美味」「好いお味」という、似た意味の繰り返しがクドイですね。それに、よく考えたら「ユツケ」の語を入れ忘れているではありませんか! ユッケを詠もうとしてユッケを見落とすなんて……!
 その後なんとか修正したのですが、逆に、わざわざ「ユツケ」と言うほうがクドイですかねぇ……(苦笑)。



平成30年10月14日(日)

        独 逸 之 響


 西洋の鐘 音連ぬ

 実に澄みゆくを 誉めて笑む

 鳴り渡れる間 良き幸得

 子も遊ぶべし 広場居ん


       せいやうのかね おとつらぬ
       けにすみゆくを ほめてゑむ
       なりわたれるま よきさちえ
       こもあそふへし ひろはゐん


 昨日はショッピングセンター「つかしん」へ行きました。ひがしまちの大阪王将で食事の後、カリヨンガーデンで子供と遊んでいたら、午後一時の鐘が鳴り響きました。説明板によると、

  カリヨン(carillon、ドイツ語ではグロッケンシュピール Glockenspiel)は、
  メロディーを演奏する「組み鐘」を意味しています。
  このカリヨンは、旧西ドイツで最も古い鋳造工場で造られたもので、
  2オクターブ25個の鐘がコンピュータ制御により自動演奏しております。

 とのことです。この鐘の音を聴きつつ、頭の中ですでに新いろは歌を模索していました。
 カリヨンといえば、私は二十年前に次のような歌を作ったことがありました。

  広き大空 故郷に      ひろきおほそら ふるさとに
  夕焼け紅 燃え立つを    ゆやけくれなゐ もえたつを
  娘子笑みぬ 幸せ得     むすめこゑみぬ しあはせう
  街でカリヨン 平和の音   まちてかりよん へいわのね

 平成十年四月八日作。これは京阪電車枚方市駅の駅前広場にあるカリヨンを詠んだものです。自分でもすっかり忘れていたこの歌を、今回ふと思い出しました。第三句目の「娘子笑みぬ 幸せ得」というのは、創作当時、単なる空想の産物でしたが……。
 それが、これから実現してゆくんだなぁ……! そう思うと、まさに感慨無量です。
 我が子の今後。幼稚園、小中学校、高校、大学、就職、結婚……。まだまだ遠い夢のような気もしますが、もうその成長過程にあることは確かな事実≠ナす!
 これからも「良き幸」を得られますように。



平成30年10月13日(土)

        好 屋 夕 餉


 妻子も笑まふ お店に居

 ほろり酔ひ得 胸温和

 デラツクスカレエ 食べけるぞ

 夢のごと 味華やぎぬ


       さいしもゑまふ おみせにゐ
       ほろりよひう むねをんわ
       てらつくすかれえ たへけるそ
       ゆめのことあち はなやきぬ


 昨夕、親子三人「すき家」で楽しく食事しました。
 たいていは一人で来ることが多いため、たまに皆で来ると、とても新鮮な気持ちになります。あまり座ったことのないテーブル席に陣取って、まずはビールをクーッと一杯。ほろ酔い機嫌で食べ物を注文します。妻は牛丼並のサラダセット、子供はお子様牛丼のすきすきセット、私はデラックスカレー大盛のサラダセットです。なんだか無性にカレーが食べたい気分でした。
 この品目はポークカレーに、牛あいがけ、とろ〜り3種のチーズ、おんたまをトッピングした、デラックスなカレー≠ナ、見た目にも贅沢感満点≠ナすね! 味も辛口で高級感があって、私は大好きです!! 大盛でも充分に満足できるので、これまで特盛≠頼んだことがありません(……今度食べてみようかな!)。さすがにメガ盛≠ヘ無いみたいですね(笑)。
 うちの子は困ったことに、日頃からあまりご飯を食べてくれないのですが、このすき家の牛丼は普段以上に食が進んだようなので、良かったです! 甘辛い汁の味がご飯に浸みて美味しかったのでしょう。セットに付いているおまけの玩具ももらって、もうにこにこ笑顔でした。
 牛丼店でこんなにゆったり寛いだのは久しぶりでした。一人では、なかなかこうはいきませんからね(自分だけなら長居は無用。いつも夢中で食べて、さっさと帰ります)。また家族で来たいです!



平成30年10月12日(金)

        魚 偏 珍 字


 魚の横に 円二重

 竹輪を意味す 驚けり

 悦増せる様 文字遊び

 誉めゐて胸ら 晴れゆきぬ


       さかなのよこに ゑんふたへ
       ちくわをいみす おとろけり
       えつませるやう もしあそひ
       ほめゐてむねら はれゆきぬ


 魚偏に「◎」と書いて何と読むか。答えは「ちくわ」! 私がこの漢字を知ったのは、いつの頃だったでしょうか。どこで見たのかはっきり覚えていませんが、記号のような突拍子もない字面が、あまりにも鮮烈に脳裏に焼き付きました。雑学の本とか、面白漢字の本に出ていたはずだと思い、手持ちの書物を何冊も当たってみたけれど、現時点では発見できませんでした(残念!)。ただ、紀伊國屋書店発売のパソコン用漢字ソフト『今昔文字鏡 単漢字15万字版』には、ちゃんと入っています! その「ちくわ」という字を題材に、一首詠んでみました。
 ところで、ちくわの起源はどこにあるのでしょうか? 小学館『日本大百科全書』には、
《室町時代中ごろに出た『宗五大草紙(そうごおおぞうし)』によると、魚のすり身を竹などにつけて焼いた形がガマ(蒲)の穂に似ていたので、かまぼこ(蒲鉾)という名がおこったといわれている。のちに、すり身を板につけたものが現れるようになり、紛らわしくなってきた。そこで、本来のかまぼこは切り口が竹の輪に似ているので竹輪(ちくわ)とよぶようになったといわれている。》
 とあります。ところが、青春文庫『ヨソでは聞けない話「食べ物」のウラ』[(秘)情報取材班 編] には、
《明治時代の前半、気仙沼に住んでいた菅野留野助が、「新しいかまぼこを作ろう」と兄の庄五郎に声をかけた。(略)留野助と庄五郎は、新しい魚練物の加工品の開発をはじめ、1882年(明治15)、篠竹でつくった串に、魚のすり身を巻いて焼き上げた。それが、ちくわの原点だ。
 一方、その新しいかまぼこの販売を引き受けたのは、東京の魚問屋の鈴木留次郎という人物。留次郎は、焼きあがった新しいかまぼこの形が竹の節に似ていたことから、「竹輪かまぼこ」と名づけ、東京、大阪、神戸などで売りはじめた。……》
 というエピソードが紹介されていました。
 これって、明治のちくわ開発者や「竹輪かまぼこ」の命名者は、室町時代からある伝統的なちくわを知らなかったということでしょうか? あるいは、全くの別物? 何だかよく解らない話だなぁと思いました。



平成30年10月11日(木)

        立 木 被 害


 大風も荒れ 広場舐め

 太い幹揺り 枝折るや

 梢地に付け 横転し

 根さへ空向く 魔の夜居ぬ


       おほかせもあれ ひろはなめ
       ふといみきゆり えたをるや
       こすゑちにつけ わうてんし
       ねさへそらむく まのよゐぬ


 九月四日に来た台風二十一号の爪痕が、未だに生々しく残っているんですねぇ……!
 先日、西武庫公園へ遊びに行った時、妻が「向うの倒れた木を見に行こう」と言うのです。あぁ、暴風で折れた枝を積み上げてあるのだろう、わざわざ見に行く必要があるのかと、そう思いました。しかし行ってみて、非常に驚きました。ドラム缶ほどもある大木が何本も何本も、完全にひっくり返ってしまい、もじゃもじゃの根が晒し物のようにむき出しになっていたのです。その様子をとても痛々しく感じました。
 別の場所へ行くと、横になった太い幹や太い枝の上に子供が数人乗っかって遊んでいましたが、びくともしません。人の重みで枝が傾いたら危ないだろうと、あとで私も幹に乗って確かめましたが、何の影響もありませんでした。これほど頑丈な樹木が倒されるんですからねぇ、台風というのは物凄い力なんだなぁと、改めて驚きました。
 その猛威を表現しようと一首捻ってみたところ、今回は「幹」「枝」「梢」「根」と、木の各部分を一通り詠み込む結果となりました。あとは「葉」を入れれば、ほぼ完璧だなぁと思います。台風に関しても「荒れ」「舐め」「揺り」「折る」「横転し」「魔」と、その威力を充分に描くことができました。仮名が重ならずにこれだけ多くの単語を詠み込めた点は、我ながらよくやったと実感しています。



平成30年10月10日(水)

        人 形 楽 園


 招くキユウピイ 親子居て

 目ぱつちり開け 揃ふよな

 知らぬ野見え 散歩をす

 渡れる風へ 共に笑む


       まねくきゆうひい おやこゐて
       めはつちりあけ そろふよな
       しらぬのみえ さんほをす
       わたれるかせへ ともにゑむ


 子供を連れて石切神社へお参りに行った、体育の日のことです。
 急坂の参道商店街をぶらぶら歩いて下り、本殿前の鳥居近くまで来た時、店先に並んだキューピー人形が目に留まりました。子供もいち早くそれを見つけ、じっと見入っています。
「買うか?」
 と声を掛けたのですが、返事がありません。後から思うと、子供はいろいろ目移りしていたのでしょう。私はひやかしの客≠ノなりたくなかったので、
「買わへんのやったら、行くぞ」
 と、早く立ち去ろうとしました。そんなの買わなくていい、という妻の言葉がさらに追い討ちを掛けます。私はべつに怒っているわけでも、イライラしているわけでもなかったんですけどね……。
 すると、子供が急に泣き出したのです。
「キューピーちゃん……、キューピーちゃん……!」
 そう言って、大粒の涙をボロボロこぼしながら大泣きするのです。その姿を見て、急に我が子が愛おしくなりました。すぐに子供の手を引いて引き返し、
「どれがいい?」
 と尋ねます。
「大きいの……!」
 え? まさか、一番大きいやつ? それって四千円近くするんだけど……(泣)。懐が少々心配になったのですが、うちの子はちゃんと五百円≠フを選んでくれました、偉い!(笑)
 家にある小さいキューピーちゃんと、それより少し大きい今回のキューピーちゃん。我が家のキューピー親子≠フ誕生です! さっき泣いた子供にも、すぐさま満面の笑顔が戻って来ました。ほんと、めでたし、めでたしです……。私はやっぱり親馬鹿ですかねぇ?(苦笑)



平成30年10月9日(火)

        苦 味 満 足


 広場遊べり 今日笑んで

 渇きも覚ゆ 濃い茶など

 売られゐるを得 すぐ飲みぬ

 胸に沁ませ 冷たさよ


       ひろはあそへり けふゑんて
       かわきもおほゆ こいちやなと
       うられゐるをえ すくのみぬ
       むねにしませ つめたさよ


 山村暮鳥の「雲」という詩があります(以下、東京書籍『新しい国語1』より引用しました)。

   おうい雲よ
   ゆうゆうと
   馬鹿にのんきさうぢやないか
   どこまでゆくんだ
   ずつと磐城平の方までゆくんか

 のんびりゆったりとした素朴な詩ですね。何度も読み味わって、私が注目したのは「おうい」という表現です。この呼び掛けがあるからこそ、悠然とした作品になっているのでしょう。特に注意したいのは「おうい」の「う」の字です。たった一文字ですが、これを抜いて「おい」にしてしまうと、たちまち雰囲気が違ってくるでしょう? 「おい雲よ」と言うと、なんだか非常に偉そうですね。相手を見下し、上から物を言うぞんざい≠ネ口の利き方になってしまいます。
「こっちは忙しくしてるのに、お前は暇でいいよなぁ! まったく嫌味な奴だ!」
 と、怒ってでもいるかのようです。
「おうい」と伸ばすと、地理的な距離感と、心情的な親近感が表現できます。遠くの相手へ親しみを込めて呼びかける感じですね。この「う」は、かなり重要な一文字です!!
 さて、このあいだ伊藤園の「お〜いお茶」を飲んだ時に、同じことを考えました。「お〜い」の「〜」が大事だ、と。ところが、ペットボトルのローマ字表記は「Oi Ocha」になっているんですよ! これでは「おい、お茶」と読んでしまうじゃないですか!
 つまり、ローマ字で長音(のばす音)をどう綴るかの問題ですね。
「オー」は「Oh」でもいいのだけれど、「オーイ」を「Ohi」と綴ると「オヒ」になってしまいます。「Oui」だとどうしても「オウイ」と読み、発音として硬いですし、「Ooi」は「多い」と誤解されます。難しいですね。
 やっぱり「Oi」と書くしかないのかなぁ……?(まぁ、長音記号を使えば済む話ですが)



平成30年10月8日(月)

        幻 球 浪 漫


 想ひ載すべき 風受けて

 悦に夢色 石鹸玉

 こち草原よ 胸躍る

 我笑みゐぬ 遊ぶなり


       おもひのすへき かせうけて
       えつにゆめいろ しやほんたま
       こちくさはらよ むねをとる
       われゑみゐぬ あそふなり


 昨日は西武庫公園へ行き、子供と一緒にシャボン玉をして遊びました。
 シャボン玉というと、昔はストローで一つずつ吹いたものですが、昨今はかなり進化しましたね! シャボン液の入った筒状の長い容器にスティックを一度浸して引き上げ、空中でゆっくり振ると、たくさんのシャボン玉が次々に作れるんですね!
 虹色の綺麗な球が風に乗って無数に飛んでゆく様は、やはり感動的です。そして、すぐに消え去る美しくも儚い¢カ在だから、より一層情趣を感じるのでしょう。これまで他の人がやっているのを見たことはありましたが、今回初めて自分でやってみて、結構楽しめました。
 さて、俳句で「シャボン玉」は春の季語になっていますが、元来は夏の風物だそうですね。小学館『日本大百科全書』によると、玉を吹くこの遊びを「水圏戯(すいけんぎ)」とも言い、江戸末期に《女性の間でも流行し、夏の玩具(がんぐ)として行商が振れ売りに歩いた》との解説がありました。その夏の玩具≠ェ、なぜ春の季語になったのか――。
 私の想像ですが、それはやはり春が来た≠アとへの喜びの気持ちが強いせいでしょう。雪と寒さに閉ざされた室内の退屈から解放され、屋外で元気に遊ぶ子供らの姿が目に浮かぶようです(小林一茶の句「雪とけて村一ぱいの子ども哉」を、ふと思い出しました)。それに加え、穏やかな春の光にはシャボン玉の優しいイメージがよく似合うからでしょう。
 たとえば、三省堂『新歳時記』の高浜虚子の解説は、風情があって好いですね。
《石鹸水や、むくろじの実を溶いた液でもいい、それに麦藁の管を浸して軽く吹くと、こまごまと流れ出る水玉、春の日に映えて黄に紫に中空にころがり消えてゆく。風船や風車とともにのどかな春の景物である。》
 ――言い得て妙≠セと思います。



平成30年10月7日(日)

        棒 状 蒲 鉾


 美味げ解れ 朱染めなる

 魚練り製品 蟹と見え

 乙で食べゐぬ 良き味は

 プロの技や 声漏らす


       むまけほくれ しゆそめなる
       うをねりせいひん かにとみえ
       おつてたへゐぬ よきあちは
       ふろのわさや こゑもらす


 テレビ朝日系『林修の今でしょ!講座』九月二十五日放送分でカニかま≠フ話がありました。今まで大して気にも留めていなかった蟹蒲鉾ですが、体に良いというのです!
 主旨は、カニかまは蛋白質が豊富で、筋状になっているから消化にも良く、筋肉を作る働きがあるとのことでした。手軽に毎日食べられるし、運動後三十分以内に摂ると筋肉増強に効果的だそうですね。また、赤い着色料はトマトやパプリカの色素を使用しているので、やはり体に良いらしいのです。番組でも言っていたように、私自身、カニかまを蟹の偽物≠ョらいにしか思っていず、過小評価し過ぎでした。反省しなければ……。
 それならば、これからはどんどん食べよう! というわけで、昨日たまたまコンビニで見かけたのを買った次第です。
 歌に詠む際、少し苦労しました。「かにかまぼこ」の語は「か」の字が重複するため使用できません。品名が「魚肉ねり製品」と表示されていたので、それで何とか言い換えるべく、四苦八苦。「かに」の語は絶対に入れようと、「に」の字が重なる「ぎよにく(魚肉)」の「にく」を外しました(蟹を英語で「クラブ(crab)」にしようか、とも考えました。しかし「倶楽部(club)」のイメージが強いため、却下しました)。
 無理矢理っぽい部分もありますが……、歌として、一応意味は通っているでしょう!(笑)



平成30年10月6日(土)

        片 隅 爽 涼


 蕊垂れ咲めり 青き此の

 花びら二枚 露草や

 今日路地居ると そよ風も

 調和覚えん 胸清みぬ


       しへたれゑめり あをきこの
       はなひらにまい つゆくさや
       けふろちゐると そよかせも
       てうわおほえん むねすみぬ


 爽やかな秋風に似合うのは、青い花。朝顔や瑠璃茉莉もそうですが、このごろよく目に留まるのが露草≠ナす。青い小さな二枚の花びらが、ウサギさんとかクマさんとか、動物キャラクターの耳みたいで可愛いですね。こういう形の花も珍しいなぁと思いました。
『ブリタニカ国際大百科事典』によると、名前の由来は、
《朝早く開花して午後(露がなくなる頃)には花が閉じるので露草の名があり、またツキクサは往時布を染めるのに用いたことによる名である。》
 確かに、露草の花は常に朝露に濡れているイメージがあります。また、布に青い色が付くということで「ツキクサ」とも言うんですね。『広辞苑(第六版)』では【月草・鴨跖草】の字が当ててありました。「跖」という字は足の裏≠意味するそうで、露草の花の形が鴨の足の裏に似ているということでしょう。しかし、足の裏だなんて、花のイメージに合いませんよね。やっぱりクマさん(熊耳草≠ニか?)のほうが好いでしょう!(笑)
 ところで、花びらは二枚だと思っていたら、ほんとは三枚あるんですね! 小学館『日本大百科全書』に、
《花弁は3枚あるが、そのうち2枚が大きく、青色、円形で径は約1センチメートル。他の1枚は白色、披針形で長さ約0.5センチメートル。》
 との解説があります。写真でははっきり判らないので、今度よく観察してみようと思います。
 さらに、花の蕊≠ノ関しては、NHK出版『里山の植物ハンドブック 身近な野草と樹木』(多田多恵子 監修) に、
《花には6本の雄しべがあるが、鮮黄色の短い3本は虫を誘うための飾り雄しべ。》
 との説明がありました。面白いですね。



平成30年10月5日(金)

        緑 菜 生 麺


 醤油ラアメン 鍋沸けり

 葱 レタスも 多く入る

 食むと笑み居つ 風を得て

 その幸に舞ふ 悦びぬ


       しやうゆらあめん なへわけり
       ねきれたすも おほくいる
       はむとゑみゐつ かせをえて
       そのさちにまふ よろこひぬ


 先日、スーパーで生ラーメンを安売りしていたので買いました。台風の影響で売れ残らないように、との配慮でしょう。とにかく、私が好きな「日清のラーメン屋さん」だったので嬉しかったです。
 昨晩は用事で出掛ける必要があったため、その前に簡単に腹ごしらえをということで、妻がこの買い置きのラーメンを手早く作ってくれました(上の画像)。
「うわぁ……、すごいなぁ!」
 私が漏らした第一声です。まず、目に飛び込んで来る緑色に圧倒されます。丼一面に広がったレタス、豪快ですね! 刻み葱もたくさん入っていて、新鮮な香りがします。醤油の風味に葉物野菜の歯応え、なかなか好かった!
 自分で作るとこうはいきません。葱ぐらいは入れるかもしれないけれど、まずひと手間加える≠ニいう意識がありませんからねぇ。レタスを入れるという発想も湧きません。そのほんのちょっとした工夫≠ノ、改めて感じ入りました。
 これはグリーンラーメン≠ナすね! しゃきしゃき、つるつる、ずずーーーっと、いただきました。美味しかった!



平成30年10月4日(木)

        秋 気 馥 郁


 今日夢のごと 好う香る

 金木犀や 我笑みぬ

 甘さ悦なり 胸へ吸ひ

 御寺傍に居 路地細し


       けふゆめのこと ようかをる
       きんもくせいや われゑみぬ
       あまさえつなり むねへすひ
       おてらはたにゐ ろちほそし


 今朝お寺の横を通ったら、とても好い香りがしました。金木犀です! 近づいて見上げると、満天の星のように小さい花がたくさん付いています。昨日まで全く意識していませんでしたが、今年も芳香漂う季節になったんですねぇ!
 視覚に訴える花は数多くあるけれど、嗅覚からその存在に気づかされる花というのは、この金木犀ぐらいでしょう。普段の生活の中で、風に乗って香って来るほどの花に出逢えることなど、滅多にありませんからね。私にとって金木犀は、心華やぐ秋の始まりを告げる花なのです!
 毎年この時季に、同じように金木犀の歌を詠んでいても、やはり微妙に表現の仕方が違いますね。去年の十月十二日、十七日に詠んだ作と、今回の作を比べてみても、似ているようで似ていません。同じ人間が同じ題材を扱っても、その時々によって、それぞれに感じ方が違うのでしょう。当然といえば当然ですが、なかなか面白いものです。
 明日は明日の歌を詠みます!
 たった四十八文字の並べ替えによる、無限の世界――。その奥深さを改めて実感しました。



平成30年10月3日(水)

        秋 光 巻 積


 朝夢路絶え 眠気失す

 お店外居つ 腹減りぬ

 声を呑まむや 鰯雲

 猶良き天に 広がれる


       あさゆめちたえ ねふけうす
       おみせそとゐつ はらへりぬ
       こゑをのまむや いわしくも
       なほよきてんに ひろかれる


 最近、鰯雲が綺麗だなぁと感じます。今朝も東の空から頭上へと広がっている、逆光の雲の模様にしみじみと見入りました。
 巻積雲。『広辞苑(第六版)』によると、《上層雲に属し、白雲の小団塊が群集あるいは並列しているもの。中緯度帯では5〜13キロメートルの高さに形成し、氷晶や過冷却の状態にある水滴から成る》とのことです。斑雲、鱗雲、鯖雲、羊雲などとも呼ばれますが、私は「鰯雲」という名が一番しっくり来ます。鰯から目刺し、夕餉の煙、温かい家庭へと想像が広がり、懐かしい幼年時代への郷愁を覚えるのです。
 さて、通勤途中にコンビニで弁当を買い、店の前でしばらく空を眺めていました。ふと店の入口へ目を落とすと、自動ドアが開き、中から出て来た若い女性(コンビニのお客さんです)がにこにこと私に微笑みかけてくれました。え?
 誰だか判らないけれど、確かに見覚えのある顔です。思わず声を発します。
「あぁ……!」
「こんにちは!」
「こんにちは……!」
 職場関係の人でもないし、誰だったかな……?
 その人が立ち去ってから、自分の頭の中に忽然と記憶が甦って来ました! 私がよく行くラーメン店の店員さんだったんですよ!! いつもの赤いユニフォームではなかったので、見違えてしまいました。特に女性は、服装でかなりイメージが変わりますね! どうも失礼致しました(笑)。
 でもよく考えたら、「こんにちは」じゃなくて「おはようございます」と言うべきだったかな……(笑)。朝七時半過ぎでしたからね。



平成30年10月2日(火)

        豊 年 満 作


 秋空広く 上真青

 稲も揺れゐて 良げ穂垂る

 八十と八つ お世話為す

 米が実りぬ 宴に笑む


       あきそらひろく うへまさを
       いねもゆれゐて よけほたる
       はちしふとやつ おせわなす
       こめかみのりぬ えんにゑむ


 アメリカのことをなぜ「米国」と呼ぶか。この問に対して、
「アメリカは国土も広いし、米の生産量が多いからでしょう」
 などと、真顔でそんなことを言う人がいますが……。
 これって、当て字ですよねぇ? 「ア」「メ」「リ」「カ」の字音に合わせて「亜米利加」と、漢字を当てているわけです。ならば「亜国」でいいわけですが、「亜」はすでに「アジア(亜細亜)」の意味に用いられているので、二字目の「米」にしたのでしょう。
 それはさておき。私は子供の時から、
「お米は八十八の手間を掛けて大切に作ったものだから、絶対に粗末にしてはいけない」
 と言われて育ちました。だから、ご飯も一粒残らず食べるようにしています。
 八十八の手間……。この言葉が私の脳裏に焼き付いています。大切なお米と、八十八の数字。「八」はもちろん末広がり≠ナ縁起の良い数とされています。八の字をじっと見つめると、日本一の富士の峰にも見えます。その八が二つも重なった八十八と、日本人にとって無くてはならないお米、しかも「米」の字を分解すると「八十八」になるという、実によく出来た話です。
 立春から八十八日目の「八十八夜」も、本来なら切りの良い九十日、すなわち「三ヶ月」としていいはずですが……。稲作を中心に考えると、やはり「八十八」しかないわけですね!
 私もこの八十八≠ノあやかって、米寿になっても元気一杯でいられたらと願う次第です。



平成30年10月1日(月)

        猛 威 之 後


 大風去りぬ 一夜済み

 また雲の無き 青空と

 無事喜べる 我陽受け

 胸に夢映え 笑んで居つ


       おほかせさりぬ いちやすみ
       またくものなき あをそらと
       ふしよろこへる われひうけ
       むねにゆめはえ ゑんてゐつ


 台風二十四号が去って、秋晴れの朝となりました! 今回はさほど激しい暴風雨にもならず、停電もなく、ほんとに助かりました。
 ただ、通勤途中にコンビニへ弁当を買いに入ったら、棚がすかすかで、ご飯気の品がなんにも無かったので驚きました。おそらく、台風の間は腐りやすい品を発注しなかったのでしょう。停電などで急遽閉店となったら、品物が売れ残って困りますからね。そういえば、昨日スーパーへ行った時も、お寿司類の棚が空っぽだったことを思い出します。
 まぁ、パン類は揃っているようなので、サンドイッチとホットドッグを買うことにしました。しかしよく考えたら、今朝も買い置きのホットドッグと焼きそばパンだったんですよね……。急いでいる時は手っ取り早く食べられて良いですが、パンばかりじゃ身が持ちません。朝もパン、昼もパンでは、すぐにお腹が減るでしょう……。
 その時、新約聖書マタイ伝第四章にあるという、次の言葉がふと浮かんで来ました。
「人はパンのみにて生くる者に非ず」(笑)
 キリスト教のことはよくわかりませんが、オチャラケちゃって、どうも失礼しました――。



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